最高裁・預貯金は遺産分割の対象に

本日12月19日、最高裁において預貯金は法定相続分で自動的に分配される財産ではなく、話し合い等で金額を決める遺産分割の対象財産であるとの判断が示されました。

もともと、銀行では遺産分割が終わっている、もしくは相続人全員の実印を押印した同意書を提出しなければ、法定相続分の範囲内の金額であっても、被相続人の預金を引き出すことは事実上できない状況にはありました。
しかし、法律上は預貯金は法定相続分で自動的に分配されるものとされていたため、こうした銀行側の姿勢に対し、違法であるという判断を示した高裁判決もあったくらいです。
つまり、今までは、法律上は、遺産分割が調っていなくても銀行に行けば自分の法定相続分に応じた預金を引き出すことができるはずだが、銀行実務上それが拒まれる状況が続いていたのです。

しかし、預貯金が遺産分割の対象となれば、銀行は遺産分割が調う前の段階で法定相続分以内の引き出しを相続人が要求しても、堂々とそれを拒むことができることになります。

結局は、争いのない相続になるように、遺産をどのように分けるかを生前から家族でよく話し合っておくことが重要です。すでに家族が不仲なら、遺言書の作成も考慮に入れるようにしましょう。
そうしないと、預金という相続財産がたくさんあるのに、いつまでも引き出すことができず、相続税の納税も自分でお金を用意しなければならない、ということになりかねません。

足立武志
1975年神奈川県生まれ。足立公認会計士・税理士事務所代表、株式会社マネーガーディアン代表取締役。株式投資・資産運用に精通した足立公認会計士・税理士として、個人投資家への有益な情報発信に努めている。

10万部超ベストセラーの『株を買うなら最低知っておきたい ファンダメンタルズ投資の教科書』(ダイヤモンド社)など著書10冊超。楽天証券「トウシル」でのコラム連載11年、570回超。日本経済新聞社、楽天証券、マネックス証券、日本取引所グループ、資産運用EXPOなどセミナー講師多数。

関連記事