不動産による対策は「節税」より「キャッシュ・フロー」重視で

相続税対策と聞いて真っ先に思いつくのは不動産を活用した対策です。ひたすら銀行から借り入れをしてひたすら賃貸マンションを建てれば、相続税をゼロにすることも可能です。

でも、借り入れをして賃貸マンションを建てると、相続税や固定資産税は安くなる一方で、借り入れの返済という問題が降りかかってきます。
実は、「節税」という面に意識が向き過ぎたあまり、「キャッシュ・フロー」、つまり金回りの面で苦労するケースが少なくないのです。

借入をして賃貸マンションを建てた場合、家賃収入の中から諸経費や固定資産税、所得税・住民税、そして借入金の利息や元本を賄う必要があります。
しかし、空室が増えて家賃収入が減ると、家賃収入だけではお金が回らなくなってしまいます。そのため、手元にあるお金が持ち出しになってしまいます。
手元にお金があるうちは良いですが、やがて手元資金もなくなってくると、いよいよ大変なことになります。結局、借金をして建てた賃貸マンションを売却する羽目になってしまいます。
売却代金で借金が全額返済できればよいですが、借金が残ることも少なくありません。そうなれば、借金だけを細々と返していくほかありません。もしそれができなければ最悪の場合自己破産をせざるを得なくなってしまいます。

借金をして賃貸マンションを建設する場合、本当にそこにマンションを建てて十分な家賃収入が見込めるのか、いざというときに備えて借入金の返済期間延長の余地を残しているかなどを含め、「金回り」の面から入念な検討をするようにしてください。

足立武志
1975年神奈川県生まれ。足立公認会計士・税理士事務所代表、株式会社マネーガーディアン代表取締役。株式投資・資産運用に精通した足立公認会計士・税理士として、個人投資家への有益な情報発信に努めている。

10万部超ベストセラーの『株を買うなら最低知っておきたい ファンダメンタルズ投資の教科書』(ダイヤモンド社)など著書10冊超。楽天証券「トウシル」でのコラム連載11年、570回超。日本経済新聞社、楽天証券、マネックス証券、日本取引所グループ、資産運用EXPOなどセミナー講師多数。

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