「想定外」で逃げる評論家と逃げられない個人投資家

先ほど、スマホで投資関連のニュースをチェックしていたところ、色々と関連記事が出てきましたのでそちらを読んでみました。すると、過去に書かれた記事も色々と出てきます。
例えば、ある評論家が、1ドル=120円超えの円安のときに書いた「もう日本は永遠に円高にならない」という記事がありました。こうした記事を、いつ1ドル=100円を割れてさらなる円高が進んでもおかしくないこの時期に読むと、非常に滑稽に思えてしまいます。そういえば、昨年日経平均株価が20000円を超えていたころに、来年の年央(つまり今頃ですね)に日経平均株価が25000円まで上昇する、という記事も確かあったよなあ、と思い出しました。

こうした「評論家」の方々はご自身で投資をしていないことが多いと思われるため、上のように予想が「大ハズレ」になっても全く懐は痛みません。それどころか、今になって過去の記事を振り返って、「当時からしてみればこうしたことは想定外だった」と言い訳をするケースが非常に多いと感じます。中には素直に謝る方もいるのですが、謝ろうが言い訳しようが、そうした「評論家」のコメントを鵜呑みにした結果損失を被るのはいつも個人投資家です。個人投資家は、先週のイギリス国民投票のように、どんなに想定外の出来事が起こっても、株を大量に持っていれば大きな損失を被ってしまうのです。株式投資をしている限り、「想定外」の連続なのです。

私が個人的にたちが悪いと思うのは、評論家の言っていることはよく読むとおかしなことだらけな場合が多々あるのですが、一般の人々が読むと、「なるほど、確かにそうだ」と納得してしまうような文章になっていることです。しかし、それなりに理路整然とした文章を書くのは評論家であれば得意中の得意です。理路整然にみえて、その根拠が希薄な主張が多いのです。

また、投資セミナーにおいても、講師の方が「ある著名な投資家が、日経平均株価は年末に20000円に到達すると言っている」といった後、あたかも年末に20000円に到達するのが決まっているかのように聴衆に説明をするといったケースが見受けられますから、注意が必要です。著名な投資家が言った通りになるのなら、株式投資で誰でも簡単に億万長者になれますね。

私は、評論家の将来の相場見通しは、ギャグあるいはエンターテインメントとして読むことにしていて、一切参考にしません。相場のことが「よく分かっている」はずの評論家が絶対に円高にはならないと言ったにもかかわらず100円割れ水準まで円高になっているのですから、いったいどうやって信じろというのでしょうか。
足元では、イギリスの国民投票の結果を受けて、また評論家の皆さんが今後の相場予測をしているようですが、そんなものを読み歩いて自分に都合の良いコメントを探し、根拠のない安心感に浸っていてはいけないのです。やはり「相場は相場に聞け」です。マーケットの動きは大体正しいのです。根拠のない予想に浸るのではなく、株価のトレンドに素直に従って売買していれば、おのずと良い結果はついてくるはずです。

足立武志
1975年神奈川県生まれ。足立公認会計士・税理士事務所代表、株式会社マネーガーディアン代表取締役。株式投資・資産運用に精通した足立公認会計士・税理士として、個人投資家への有益な情報発信に努めている。

10万部超ベストセラーの『株を買うなら最低知っておきたい ファンダメンタルズ投資の教科書』(ダイヤモンド社)など著書10冊超。楽天証券「トウシル」でのコラム連載11年、570回超。日本経済新聞社、楽天証券、マネックス証券、日本取引所グループ、資産運用EXPOなどセミナー講師多数。

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