1月6日の日本株では、フィンテック関連銘柄の中心である2銘柄、さくらインターネット(3778)とインフォテリア(3853)の株価が対照的な動きとなりました。
さくらインターネットは伸び悩みこそしたものの、前日比85円高の1160円と上昇、対してインフォテリアは寄り付きから安く、引け値は220円安の950円と急落しました。
同じフィンテック関連銘柄なのに、なぜここまで株価の動きが異なったのでしょうか。原因の1つに、「空売り残高の多寡」があると私は思っています。
1月5日時点での日証金の信用取引残高を見ると、さくらインターネットの売り残は87万株、買い残は51万株と、空売り残高の方がかなりたまっていて、買い残高よりも大きくなっていました。一方、インフォテリアは売り残が4万株、買い残が28万株と、空売り残高が買い残高より少なく、空売り残高の水準自体も小さかったのです。
年末時点での信用残高全体をみても、さくらインターネットは買い残と売り残が拮抗している一方、インフォテリアは買い残の方が多い状態でした。売り残の株数自体もさくらインターネットの方がインフォテリアの3倍以上ありました。
実は、テーマ株のように短期間で急騰する銘柄がどこまで大きく伸びるかは、空売りの踏み上げの有無に依存することが多々あります。空売りの踏み上げとは、株価が割高だと思って上昇途中に空売りを仕掛けた投資家が、意に反したさらなる株価急騰により多額の含み損を抱え、それに耐えられなくなり損失覚悟の買戻しが生じることで株価が上昇することをいいます。
投資家の中には、この踏み上げを期待して買いを入れてくる人も大勢います。
そのような状況で、同じように株価が大きく上昇している2銘柄のうち、さくらインターネットは空売りがかなり溜まっているため踏み上げが期待できる、さらに踏み上げ狙いの買いも入りやすいという判断が1月5日の時点でできました。逆にインフォテリアは空売りが思ったほど溜まっていないので踏み上げの期待薄、さらに踏み上げ狙いで買い上がった投資家からの期待外れの売りも生じやすいという判断ができたのです。
もちろん、相場に絶対はありませんから必ず今日のような動きにつながるとは言えませんが、例えばこれらの銘柄を保有していて利食いのタイミングを見計らうようなときは、大いに参考になると思います。
10万部超ベストセラーの『株を買うなら最低知っておきたい ファンダメンタルズ投資の教科書』(ダイヤモンド社)など著書10冊超。楽天証券「トウシル」でのコラム連載11年、570回超。日本経済新聞社、楽天証券、マネックス証券、日本取引所グループ、資産運用EXPOなどセミナー講師多数。