新規買いは「客観的」かつ「損失率10%以内」の損切りができるタイミングで

私は株式投資で生き残るためには損切りは必須だと思っています。特に今のような下げ相場では、損切りをしなければ大量の塩漬け株が生じてしまいます。
そして、損切りもただすればよいというわけではなく、損切りすべきタイミングがあります。私はこのタイミングは、「客観的」なものを用いるべきと考えています。
私が普段損切りタイミングとして用いている25日移動平均線は、どの株価チャートにも描かれているポピュラーなものであり、多くの投資家が常に意識している「客観的」なものです。

しかし、今のような株価急落からの反発局面で新規買いする場合は、下降トレンドの中を買い向かうことになります。通常、25日移動平均線を割り込んだら損切りですが、そもそも現時点で25日移動平均線を割り込んでいるため、この損切りルールは使えません。
例えば、25日移動平均線1000円、直近安値700円、現在値750円の銘柄があるとしましょう。
この状況で、25日移動平均線以外に客観的なものとして挙げられるのは「直近安値」です。直近安値を割り込めば、株価の下落が継続していることになりますし、多くの投資家は直近安値を割り込むかどうかを重視します。ですから、直近安値は客観的な意味合いを持ちます。
もし、この銘柄を750円で新規買いした場合は、損切り価格は直近安値700円を割り込んだ699円とします。こうすれば、損失率も10%以内で抑えられますから、下降トレンド中の買いとはいえ悪くない買いタイミングでしょう。

しかし、反発が進み、株価が900円まで上昇した時点で新規買いした場合、直近安値700円割れを損切りとすると、損失率が22%にも達してしまいます。損失率はできるだけ10%以内に抑えるべきです。
では、買値900円から10%下がった810円を損切り価格とするのはどうでしょうか。実は、この810円は全く客観性を持ちません。単に、自身の買値から10%値下がりした価格というだけです。他の投資家は、この810円について何ら興味を示しません。他の投資家にとって関心のない価格というのは「客観的」とはいえません。

とはい直近安値割れで損切りとすると損失率が大きくなってしまいますから、買値から10%下落の810円で損切りとするほかありません。でもそうすると、810円で損切り後、直近安値を割り込まずに反発→900円で買い直し→そこから10%下がって再び損切り→直近安値を割り込まずにまた反発・・・というように、意味のない新規買いと損切りの繰り返しになりかねません。
つまり、900円は新規買いするタイミングではないのです。900円で買うなら、1000円を上回って25日移動平均線を超えたところで買う方がよほどよいタイミングです。
中途半端なタイミングで買うと、結局は株価の動きに翻弄され、損切り時の損失率が大きくなったり、しなくてもよい損切りをする羽目になってしまうのです。

文章だけで書くとなかなか伝わりにくいと思います。拙著「株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書」にてチャート、図表入りで詳しく解説していますので、損切りについてもっと知りたいという方はぜひご覧ください。

 

 

足立武志
1975年神奈川県生まれ。足立公認会計士・税理士事務所代表、株式会社マネーガーディアン代表取締役。株式投資・資産運用に精通した足立公認会計士・税理士として、個人投資家への有益な情報発信に努めている。

10万部超ベストセラーの『株を買うなら最低知っておきたい ファンダメンタルズ投資の教科書』(ダイヤモンド社)など著書10冊超。楽天証券「トウシル」でのコラム連載11年、570回超。日本経済新聞社、楽天証券、マネックス証券、日本取引所グループ、資産運用EXPOなどセミナー講師多数。

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