1月29日の日本株と来週の投資戦略

<1月29日の日本株>
1月29日の日本株は、日銀のマイナス金利導入決定の発表を受け、日経平均株価は476円85銭高の17518円30銭で引けました。金融緩和策の拡充により、金利敏感株である不動産株やその他金融株が大きく上昇、一方マイナス金利により業績悪化が懸念される銀行株が下落しました。
個人的には、不動産株やその他金融株は直近のトレンドが下降トレンド続きだったこともあってほとんど持っていなかったこと、新興市場銘柄があまり強くなかったこともあり、日経平均株価が大幅上昇した割には利益はあまり伸びませんでした。
本日のADA指数は32.1%となり、昨日の28.5%より上昇しました。本日上昇トレンドに転じた銘柄は意外にもそれほど多くなかった印象です。ただし、本日の上昇で株価が25日移動平均線まで戻ってきている銘柄が多数あり、来週以降さらに株価が上昇するようだと、上昇トレンドに転換する銘柄が一気に増加してくるものと思われます。

<場中の株価を見れないことがプラスになった日>
と、本日の相場概況を書くとこんな感じです。日経平均株価の日足チャートをみると、大きめの陽線を引いていて、これだけ見れば「金融緩和発表で株価が上昇したのだろうなあ」と思うだけです。
しかし、本日の後場の相場は、近年まれにみるほどの壮絶な値動きをしていたのです。
後場寄り直後、マイナス金利決定のニュースを受け、日経平均株価は一気に600円以上上昇しました。しかし、そこから今度は一気に800円の急落、前場の安値さえも割り込む動きになってしまいました。この動きをみて、多くの市場参加者は、昨年12月の日銀金融政策決定会合のように、1日(というか数分)で金融緩和を織り込んでしまった、今後は下落相場に転じる、と思ったのではないでしょうか。
ところが、800円急落の後、再度上昇に転じ、底値から800円上昇して引けたのです。この動きには私も本当に驚きました。まさに難易度MAXの株価の動きです。
場中にこの株価の動きを見せられてはたまったものではありません。下手をすると、後場寄りの急上昇で慌てて飛び乗り買い→その後の急落で投げ売り+さらなる下落を見越して空売り→しかし再度の上昇で空売り買戻し+再び飛び乗り買い、というように、往復ビンタどころか、1.5往復もやられることになってしまいかねません。
でも、日中株価を見ることができない個人投資家の皆様は、後場にこんなとんでもない株価の動きがあったことを夜になって初めて知った、という方も多かったのではないでしょうか。
サラリーマン個人投資家は場中に株価の動きを見ることができないハンデを背負っているわけですが、今日に関しては、株価を場中に見れなかったことが、余計な売買をして資金を減らすことを回避してくれたといえるでしょう。

<金利敏感株を狙うか、好業績銘柄を狙うか>
今日の相場では、不動産株やその他金融株(消費者金融など)が大きく上昇し、まさに「金融緩和=金利敏感株の上昇」というセオリー通りとなりました。では、来週以降、こうした金利敏感株を積極的に買っていくべきでしょうか。
これについては、やはり「株価は株価に聞け」ということで、株価のトレンドについていくしかないとは思いますが、今日の大幅上昇ですでに25日移動平均線から大きく上方にかい離している銘柄もあります。例えば、このような銘柄を月曜日の寄り付きの高いところで買うと、そこが目先の高値になってしまう恐れも大いにあります。積極果敢に攻めていってもよいのですが、私なら、本日急騰した銘柄で、週明けも高く始まりそうなものは避けたいと感じます。その上で、今後の調整局面があれば新規買いを検討したいと思います。
それよりも、金融緩和に関係なく、好業績銘柄はしっかりと値を戻しているのが実情です。例えばアリアケジャパン(2815)はすでに急落前の水準まで回復していますし、寿スピリッツ(2222)やニフコ(7988)は、急落前の高値を更新しています。幸いなことに、本日の相場をみていると、好業績銘柄はそんなに派手に上昇してはいません。また、今日の上昇により25日移動平均線をようやく超えたばかりの銘柄や、もうすぐ超えそうという銘柄も数多くあります。こうした銘柄の、25日移動平均線超え直後を買い、25日移動平均線割れで売却するのが有効な戦略だと思いますし、私自身はそんな感じで動いています。

<今後の相場は「読まない」こと>
日銀のマイナス金利決定の発表を受け、さっそく専門家が今後の日本株の見通しについて相場観を披露しています。私も何人か見ましたが、参考にすべきなのは、いったいマイナス金利とはどんなもので、それにより企業業績や株式市場にどのような影響があるのか、という点にとどめるべきでしょう。
確かに、今日の株価の動きを見る限りでは、マーケットはマイナス金利を好感し、為替レートも一気に121円台まで円安が進みました。しかし、来週以降も同じ反応が続くかどうかは不透明です。結局、マイナス金利導入により、今後日本株がどうなるかなど、はっきり予測することなど誰にもできないのです。もちろん、私にだって皆目見当がつきません。
そもそも、マイナス金利が日本経済や日本株にどのような影響を与えるか、市場参加者すらよくわからなかったからこそ、今日のような「600円高→800円安→800円高」という異常な乱高下を見せたわけです。
分からないものを予想する時間があるなら、会社四季報をめくって好業績の銘柄を発掘する作業に時間を費やした方がよっぽど有意義だと思います。そのうえで、株価のトレンドが上昇トレンドの間だけ保有すれば全く問題ありません。

足立武志
1975年神奈川県生まれ。足立公認会計士・税理士事務所代表、株式会社マネーガーディアン代表取締役。株式投資・資産運用に精通した足立公認会計士・税理士として、個人投資家への有益な情報発信に努めている。

10万部超ベストセラーの『株を買うなら最低知っておきたい ファンダメンタルズ投資の教科書』(ダイヤモンド社)など著書10冊超。楽天証券「トウシル」でのコラム連載11年、570回超。日本経済新聞社、楽天証券、マネックス証券、日本取引所グループ、資産運用EXPOなどセミナー講師多数。

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