テーマ株は「狙う」のではなく「買えたらラッキー」くらいが丁度良い

ポケモンGOの大ヒットにより任天堂(7974)の株価が2倍になり、関連銘柄の株価も大きく値上がりしたのは皆様ご存知のとおりです。多くの個人投資家の方は「ポケモン相場に乗り遅れた」「今からでも間に合うだろうか」「他の関連銘柄は何かないか」と思っているのではないでしょうか。
でも私の考え方は違います。こうしたテーマ株は決して狙って買えるものではなく、たまたま持っていた、もしくはたまたま初動で買えた、といった程度にとらえておくくらいで丁度良いと思っています。
私はポケモン関連株の代表的な銘柄のうち3銘柄保有していますが、これは狙って買えたのではなく、まさにたまたま保有していた銘柄がポケモン関連株だったというだけです。

大前提として、株価が上昇する前に先回りしてテーマ株を狙うことはほぼ不可能です。テーマ株としてどの銘柄がいつ上昇するかは事前にはまず分からないからです。そのため、たまたま保有していたというのではなく積極的にテーマ株へ投資するなら、いかに「初動」につくかが重要です。
私であれば、テーマ株へ新規買いするときであっても、通常の買いタイミングと同じように実行します。つまり、25日移動平均線の上に株価があり、かつ移動平均線からのかい離が10%程度以内です。これに直近高値超えの逆指値注文を組み合わせます。そしてテーマ株の内容によっては、移動平均線からのかい離を20%程度以内まで緩和することもあります。

私がテーマ株を新規買いするときに何に一番気を付けるかと言えば、「失敗して損切りとなったときに損失がどれくらいになるか」です。
私は移動平均線割れを基本的に損切り価格としますから、移動平均線からのかい離が10%なら損失率10%前後、20%なら損失率20%前後と推定できます。私は損失率はおおむね10%以内に収めるべきと思っていて、例外的に「この銘柄は」と思うものは20%以内でも可としています。
今回のポケモンGO相場はかなり大きなものとなりつつありますが、実際、テーマ株として株価が短期間に何倍にもなることは少ないのです。多くは株価が数十%上昇して終わりです。1日だけ20%ほど急騰して終了というケースもゴロゴロしています。
ですから、今回のポケモン相場はかなりレアケースであり、株価が20~40%上昇したら終了することが圧倒的に多いという事実をもとに戦略をたてなければなりません。
そうすると、やはり25日移動平均線から30%も40%も上方にかい離したタイミングでの新規買いは無謀としか思えないわけです。

例えば任天堂を新規買いするタイミングは7月8日しかなかったと思います。このときの移動平均線からのかい離率は10%ほどでした。翌7月11日になると、かい離率が20%に達してしまいます。どうしても任天堂株を買いたいなら11日の寄り付きでギリギリセーフという感じです。
任天堂の株価は5月19日に16490円、5月31日に16550円、6月9日に16435円という高値があります。したがって直近高値は16550円です。
もし、任天堂にあらかじめ16550円超えで買いとする逆指値注文を入れておけば、7月8日に16555円近辺で買えていたはずです。もちろん、これはポケモンGOのヒットにより株価が上昇するかもしれないと事前に予測しての行動ではなく、純粋に任天堂株に投資したいという前提での逆指値注文です。

同様にイマジカ・ロボットホールディングス(6879)も、買いタイミングとして適切なのは7月12日のみです。もし5月25日の直近高値500円を超えた価格で買いとする逆指値注文を事前に入れておけば、7月12日に501円近辺で買うことができました。

私が株式投資で最も重視するのは「いかに大きな損失を出さないか」です。そして、株価が大きく上昇した段階でテーマ株に飛び乗ることは、大きな損失につながる最たる行動です。
テーマ株の多くは業績の裏付けがないため、一旦天井をつけると、銘柄によっては元の株価にまで戻ってしまいます。株価が3倍になった銘柄なら、そこから3分の1になってしまうことも当たり前のようにあります。
25日移動平均線からのかい離率が50%、100%に達した状態からの新規買いなどもってのほかです。私は絶対に勧めませんが、それでもどうしても買いたいというのであれば、買った直後買値から10%下に逆指値の売り注文を入れておくなどして、損失の拡大を防ぐべきです。

足立武志
1975年神奈川県生まれ。足立公認会計士・税理士事務所代表、株式会社マネーガーディアン代表取締役。株式投資・資産運用に精通した足立公認会計士・税理士として、個人投資家への有益な情報発信に努めている。

10万部超ベストセラーの『株を買うなら最低知っておきたい ファンダメンタルズ投資の教科書』(ダイヤモンド社)など著書10冊超。楽天証券「トウシル」でのコラム連載11年、570回超。日本経済新聞社、楽天証券、マネックス証券、日本取引所グループ、資産運用EXPOなどセミナー講師多数。

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