PERの使い方(1)低PERには理由がある

本当はファンダメンタル分析についても色々と書いていきたいのですが、1月に入ってからは株価下落が続きましたので、まず損失を増やさないことを重視して投資戦略を書いていました。
今後、相場が落ち着いてきましたら、ファンダメンタル分析についての記事も増やしていきたいと思います。

まずは、PERの使い方について記しておきます。実は、PERは非常に奥が深いもので、「低PER=割安」「高PER=割高」といった単純な法則は成り立ちません。これが成り立つのなら、低PERの銘柄を買っておけば誰でも億万長者になれますが、実際にはそうはなっていません。

株の入門書や多くの専門家によれば、PERが低い銘柄は割安だから「買い」ということになりますが、本当にそれで正しいのでしょうか。
プロもひしめく株式市場で、割安な銘柄が本当にいつまでも放置されているものなのでしょうか。
確かに、不人気なため割安な状態のままになっている可能性もあります(➀)。また、今年に入ってからの急落のように、全体相場の下落により優良な銘柄もつれ安し、その結果低PERになっていた(➁)のならば、それは確かにお買い得です。
でも、低PERの理由が、将来の成長鈍化や、業績悪化を織り込んで株価が下がった(③)結果だとしたらどうでしょうか。表面上低PERにみえて、実際は全然割安ではなかった、ということになりかねません。

問題は、低PERで放置されている理由が、上の➀から③のいずれに該当するのかを当てるのが困難という点にあります。もし➀や➁の理由ならば買ってもよいですが、③の理由であれば買ってはいけないことになります。場合によっては、➀から③の理由が複合して株価が形成されているかもしれません。
こんなとき役に立つのが株価のトレンドです。株価が下降トレンドにある間は、たとえ低PERでも新規買いをしないようにするのです。もし本当に割安に放置されているならば、そのうち株価が持ち直して上昇トレンドに転じるでしょうから、そこで買ってもまだまだ安値圏で買うことができます。一方、③の要因で株価が下がっているのであれば、上昇トレンドに転じることなく株価は下落を続けていくことが多くなっていきます。こうして、極力③の銘柄を避けることができるのです。

もちろん、この方法で100%成功するわけではありませんが、何も考えずやみくもに低PER銘柄を買いあさっていくよりは、明らかに成功の確率がアップするはずです。

足立武志
1975年神奈川県生まれ。足立公認会計士・税理士事務所代表、株式会社マネーガーディアン代表取締役。株式投資・資産運用に精通した足立公認会計士・税理士として、個人投資家への有益な情報発信に努めている。

10万部超ベストセラーの『株を買うなら最低知っておきたい ファンダメンタルズ投資の教科書』(ダイヤモンド社)など著書10冊超。楽天証券「トウシル」でのコラム連載11年、570回超。日本経済新聞社、楽天証券、マネックス証券、日本取引所グループ、資産運用EXPOなどセミナー講師多数。

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